脂質異常症とは?

脂質異常症というのは、脂質の中でも特に悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、あるいは善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示す病気のことです。

LDLコレステロールは、血液中でコレステロールを肝臓から末梢組織に運んでいますが、多すぎると血管の壁に入りこみ、動脈硬化を引き起こす一番の担い手になるため、悪玉コレステロールと呼んでいます。

HDLコレステロールは、血管壁の余ったコレステロールを肝臓へ戻し、動脈硬化を進行させないように働くので、善玉コレステロールと呼ばれています。

中性脂肪は、多くなりすぎると肥満や脂肪肝をきたし、動脈硬化を引き起こすもとになります。

◆脂質異常症の診断基準(空腹時採血)

高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dL以上
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40mg/dL未満
高トリグリセライド血症 中性脂肪(トリグリセライド) 150mg/dL以上

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版

動脈硬化進める最大の危険因子

悪玉コレステロールや中性脂肪が高い、あるいは善玉コレステロールが低いと、動脈硬化を引き起こすことがあります。

血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管の壁に余分な脂が沈着し、「プラーク」と呼ばれる塊が作られます。こうした余分な脂は比較的短期間で血管壁にたまるため、柔らかくて壊れやすいのですが、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなって、血管が詰まりやすい状態になります。このような、血管の壁の変化を”粥状(じゅくじょう)動脈硬化”と呼んでいます。

不安定なプラークが破れると、破れた部分を修復するため、血液の成分の一つである血小板が集まり血栓ができます。

この血栓が大きくなって動脈を塞いでしまうと、血液はその先に流れなくなり、血流の途絶えた組織や臓器は壊死します。脳動脈が詰まれば脳梗塞、心臓の冠動脈が詰まれば心筋梗塞、足の動脈が詰まれば急性動脈閉塞症を発症します。

脳梗塞や心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占めています。このように、脂質異常症を放置すると、症状がないまま動脈硬化が進行し、生命の危険にさらされたり、後遺障害が起こったりするのです。

治療目標値はどれくらい?

普通、血液検査値の基準値はみんな同じですが、脂質異常症の治療目標は、一人ひとり違います。心筋梗塞や狭心症をすでに起こしてしまって治療中の方や、糖尿病や高血圧、喫煙などの他の動脈硬化を進めやすい環境にある方は、より低いLDLコレステロールを目指さねばなりません。

日本動脈硬化学会のガイドラインにはこれらのリスクに応じた目標値が決められています。

脂質異常症の治療

脂質異常症は、多くの場合では食事や運動などの生活習慣が深く関係しています。ですから、脂質異常症の治療の基本は食事療法と運動療法であり、この2つの治療法は長く続けていく必要があります。食事療法と運動療法で脂質が改善しない時や、すでに動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞などの発作を起こしている場合などに薬物療法が行われます。

食事療法

LDLコレステロールの高い人は、飽和脂肪酸(主として動物性脂肪)を含む食品を減らして不飽和脂肪酸(主として植物性脂肪)を含む食品を増やす、コレステロールを多く含む食品を減らす、食物繊維を多く含む野菜などを積極的にとる、トリグリセライド(中性脂肪)の高い人は糖質やアルコールを控える、肥満を解消・予防するために、摂取カロリーのコントロールなどを行います。

運動療法

適度な強さのウォーキングなどの有酸素運動を続けると、トリグリセライド(中性脂肪)を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があることが分かっています。また、運動は肥満の予防や解消に役立ちます。

心臓、腎臓、関節などに病気がある方など、運動が勧められないことがありますので、必ず主治医に相談して、その指示に従って取り組むようにしてください。

薬物療法

脂質異常症の薬には、主にLDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライド(中性脂肪)を下げる薬があり、医師は患者さんそれぞれに適した薬を処方します。薬を2~3か月服用しても、脂質管理目標値まで下がらない場合には、薬の変更や増量が検討され、数種類の薬を併用して服用することもあります。
薬の効果をしっかりと出すために、また副作用を防ぐためにも、医師、薬剤師の指示通りに服用することが大切です。薬の効果や、副作用がないかどうかを確認するために、定期的に血液検査を行います。