子どもの幸せ 小児科医の引き出しより

このコーナーは、「子どもの幸せ 小児科医の引き出しより」の内容の紹介です。少しずつ追加していく予定です。

このコーナーはまだ工事中です。おそらくいつまでたっても工事中のままだと思いますが、お足元に気を付けて出来ている部分だけでもご利用ください。


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目次

はじめに

しかたがないを捨てたい
即席効果    学会から帰って    安いことの罪    こまかい配慮    かぜと入浴    
小児医療の現場から    女性の飲酒    酒と脳    生命尊重    外来語    
詰め込み教育    背を見て育つ    学校と家庭    個別接種    子どもの食生活
人知らずして慍らず    子どもの幸せ    食物アレルギー    アンケート調査
乳児健診の一つの方向    一歳六ヶ月児健診の言語発達    発表時間    子どもにもっと自由を
人口問題を考える    育児教育を原点にかえそう    子育てを考える    しかたがないを捨てたい

ランニング随想
私の朝    ランニングと長生き    堤君と私    私の実践的走り学    外国のゴルフ初体験

私の名前
私の名前    畑へ掘った落とし穴    回顧談    学士鍋の思い出    忘れ得ない言葉

郷医懐旧談

子ども風土記
子ども風土記  高知県の巻    小児の健康とは    子どもの権利は守られているか    子どもと栄養
成人病予防と学校給食    子どもの食生活の崩壊を防ごう    高知県の子どもの食生活    
学校保健と情緒障害    地域の小児保健の活性化のために

地域の中の小児科医
地域の中の小児科医    保健文化賞を受賞して    日本小児科医会の今後に期待するもの    
小児科医の未来を考える

海外の小児保健
アメリカの小児開業医    ソ連の小児保健をのぞいて    南アフリカの小児保健

ゴタゴタ備忘録

あとがき


しかたがないを捨てたい


 テレビや新聞広告の「もったいないを、捨てたくない」が流行語になっている。ところが「もったいない」が聞かれなくなったのと反比例して、「しかたがない」が到るところで聞かれる。「もったいない」と違って、「しかたがない」は日本人独自のすばらしい知恵でもなんでもない。

 「子どもの数が少なくなったのも、こんな社会情勢だからしかたがない」「家庭の教育力が低下するのは、共働きの親が増えたのだからしかたがない」などの声が当たり前のように語られるかと思うと、「老人福祉が当面の急務だし、子どもの対策まで手が回らぬのはしかたがない」。挙げ句の果てには、施策の貧困は「国や県にお金がないからしかたがない」となってしまう。

 こうして自らに声を自分で訴えるチャンスを与えられない子ども達の願いは、大人たちの「しかたがない」の大合唱の前に無視されてしまい、大人に都合のよい施策が大きい顔をしてまかり通ってしまう世の中になってしまった。時たま、子どもの側にたった正論が出ても、「おっしゃるとおりですが、現実の状態ではしかたのないことで」と軽く一蹴されてしまう。

 かけがえのない子どもの命や発達を守るために、おとなはこの「しかたがない」壁を突き破るための努力をもっと払わねばならないのではないか。「しかたがない」のではなくて、何とか「しかたはないものか」という発想はできないものだろうか。そんなことを言ってもしかたがないと笑われるかもしれないが、高知の小児保健の向上のためにも、私たちの頭にこびりつきかけた「しかたがない」観念を打ち破ることがまず第一だとつくづく思うこの頃である。

一九九三年 小児保健高知

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