本の紹介コーナー・・・院長の推薦する本
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「家族」はこわい 斉藤学
子どもと悪(今ここに生きる子ども) 河合隼雄
抱きしめてあげて  渡辺 久子
はじめてであう小児科の本  山田 真
アダルト・チルドレンと家族  斎藤 学
失速するよい子たち  三好 邦雄
癒す心、治る力 〜自発的治癒とは何か〜  アンドルー・ワイル
育くむこころとからだ  尾木文之助

「家族」はこわい 斉藤学 日本経済新聞社) 1200円

 この本の冒頭で斉藤さんはこう語っています。

『わたしはこれまで、家族とはまず子育ての場であり、本質的には母と子のための場所であると考えてきました。しかし、最近は、父親の機能というものを強調するようにしています。家族というものは、「これは俺の家族だ」という父親の宣言によって成立すると考えるようになりました。「おまえたちの生存の責任は俺がもつ」−−この「父親宣言」があってこそ、家族は成立する。つまり家族の幕開けを告げるのは、母親ではなく、父親だということです。』

 ここに出てくる「父親」というのは生物的父性とは別の社会的父性です。近年父親の育児参加が叫ばれる中で、母親の助手的な役割ばかりがクローズアップされたり、逆に自分では手は出さないけれど母親を一方的に指導しようとする父親が増えているように思えます。また、一方には「父権の復権」を唱え、やみくもに権威と強権を持たせるべきという専制主義のような考えもあります。

 父親が家庭においてどのような役割を演じるかによって、その家族のあり方が大きく変わってきます。もちろん子育てにも大きく影響します。みなさんの家庭のお父さんの役割を見直すためにも、ぜひ一度読んでいただきたい1冊です。

子どもと悪(今ここに生きる子ども) 河合隼雄 岩波書店 1200円(+税)

 私達大人はいうことをよくきく、勉強ができる「よい子」肯定し、そういう子を育てるには単純に「悪」を排除すればよいと考えていないでしょうか?

 「悪」は「創造性」や「自立」と深いところで結びついています。決して許されない悪もありますが、私達人間の心の中は「善」一色にも「悪」一色にも染まりません。「悪」を画一的に排除しようとする考えはさらに大きな「悪」を呼んでしまうこともあります。

 河合さんは「いじめ」「盗み」「暴力と攻撃性」「うそと秘密」などをテーマに、大人がもう少し子どもの「悪」と辛抱強くつき合うことによって子どもが生き生きとした豊かな人生を味わうことができるのではないかと述べています。

 河合さんは日本でも有名な臨床心理士ですが、なかなか魅力のある人です。詩人の谷川俊太郎さんがこの本によせて詩を書いています。

 まんびきはしたことないけど
 わたしはひとのこころをぬすんだ
 ぬすんだこともきづかずに

 へやにかぎはかけないけど
 わたしはこころにかぎをかける
 かぎのありかもわからずに

 うそはついていないけど
 わたしはほほえんでだまってる
 ほんとのきもちをだれにもいわずに

 いいこだからわたしはわるいこ

抱きしめてあげて  渡辺 久子 彩古書房 1300円

 毎日の診療の中で最近子ども達の様子がかわってきているように感じます。ここ数年の間に精神的ストレスによると思われる腹痛、頭痛などが明らかに増えてきています。渡辺久子先生は児童精神科医として子ども達の心の問題に関わり続ける中で子ども達がなぜこんなになってしまったのか、その答えを教えてくれています。

 せわしない現代社会で時間に追われ業績を上げるためひたすら働く大人達の心が実は深く傷つき孤独であること、そんな大人達から無言の(無言でない場合もありますが)プレッシャーを受け家庭や学校の中で緊張の日々を送っている子ども達が何より苦しんでいることなどです。

 渡辺先生はそういう親子に対して抱っこによる育て直し療法を次のように語っています。

 『そこで、ともに悩みあぐねた結果、私のところにやってきたお母さんと子どもの両方を救うために考えたのが”抱っこ療法”なのです。緊張しきっている二人がお互いにホッとしあい、「大丈夫、私達は心がつながっているんだ」という気持ちを素直にもちやすくするために、お母さんが子どもを抱っこしてやることほど役に立つものはありません。

《中略》

 実際抱っこは、驚くほど大きな親子関係の改善のきっかけを作りだしてくれるものです。抱っこに始まって、子どもがもう一度、素直な柔らかい心でお母さんを慕い直し、お母さんも、子どもの気持ちを深く理解するようになり、母子関係の絆が、しっかり作り直されていくのが、「育て直し療法」です。母子の心の通い合いが始まると、子どもの生きることの苦悩は、症状という歪んだ形でそのはけ口を求める必要がなくなり、自然と消えていきます。お母さんにわかってもらい、支えてもらうことによって、乗り越えていけるものに変容するのです。』

 なお、渡辺先生の「こころ育ての子育て」(白石書房)「子どもを伸ばすお母さんのふしぎな力」(マルユー書籍)もおすすめです。


はじめてであう小児科の本  山田 真 福音館書店 2500円

 福音館書店の「母の友」の連載をまとめたこの本は子どもの病気についてわかりやすく、しかもとても誠実に答えてくれています。

「あちこちの病院にかかってみたらお医者さんの言うことがそれぞれ違うこともある。それは医学の世界ではまだわからないことがたくさんあるからなんだ」と、現在の医学の内情のようなことまでごまかさず、自分の反省を込めて語ってくれます。読み物としてもおもしろいし、いろいろな病気の辞書としても使えます。

 とてもおもしろかったのは、子どもに増えている「くり返し病」についての部分です。

 頭が痛い、お腹が痛い、吐く、足が痛いなど、くり返し起こる症状の大半は心理的な原因によるものです。遊び場を奪われ宿題だ、塾だと追い立てられる不自然な生活をさせられている子ども達にこの病気は増えています。

 「目は口ほどにものをいいなんてことわざもありますが、目だけでなくておなかも足も口ほどにものをいうものなのです。痛むという形で訴えている子どもの本当にいいたいことは何なのか?何か不満やストレスはないのか、それをとらえてやる努力をすることが必要だと思います」という言葉に大変共感しました。


アダルト・チルドレンと家族  斎藤 学  学陽出版 1600円

 ある時本屋さんで何気なく手にとって、おもしろそうなので買ってみました。その後、興味深いあまり、一気に読み終わりました。

 アダルトチルドレンとは、「安全な場所」として機能していない家庭の中で育って大人になった人々のことです。アダルトチルドレンは「周囲が期待しているように振る舞おうとする」「Noが言えない」「楽しめない」「情け容赦なく自己を批判する」などの特徴を持ち、ある種の生きにくさを感じています。

  暖かく愛され、受け入れられた子供時代を持たなかった人たちは、不安や怒りを調節する能力が低く、自己や他者への「憎しみ」を生みやすく、うまく人間関係を作れなくなってしまいます。このように子供時代に家族から受けた心の傷(トラウマ)はその人の人生を不幸な方向へ支配してしまいます。

 この呪縛から逃れるには、ありのままの自分と向き合って、自分自身と自分の過去を全て受け入れることが第一歩となります。

 アダルトチルドレンが癒やされないまま親になったとき、その子どもに同じ様な心の傷を負わせてしまうことがしばしばあります。癒やされないアダルトチルドレンがふえれば、不幸な子どもがまたふえるのです。

 現代社会の「いじめ」や「不登校」など、子ども達の不幸のからくりが理解できたような気がしました。


失速するよい子たち  三好 邦雄  主婦の友社 1200円

 成績も性格も行いもいい、いわゆる「よい子」たちが突然、不登校や無気力あるいは身体の不調に陥ってしまう。よい子たちの挫折(失速)が急増しています。その理由には、生き生きとした子供の心を失ってしまった「オトナ子供」の急増と、「オトナ子供」をせっせと作る、親、学校を含めたオトナ社会が背景にあります。もはやこの問題は、個人や家庭、学校を越えた社会全体の問題です。

 著者は、失速した子供たちを受けとめ、治療に苦闘するする、埼玉県の小児科医の三好先生です。子育て中のお父さん、お母さん、保母さん、学校の先生方、小児科医の先生方、その他子供に関わる方、日本の行く先が心配な方、ぜひ御一読ください。

癒す心、治る力 〜自発的治癒とは何か〜  アンドルー・ワイル  角川書店  1600円

 全米でベストセラーになったこの本には、人間はもともと治る力をもっていて、その力をじゃませずうまく使って、病気を自然治癒させることの大切さが具体的に分かりやすく書いてあります。私はこの本を読んで病気と心の働きに深いつながりを知り、非常に驚きました。

 著者である、医師のアンドルー・ワイル博士はアリゾナ大学で教鞭をとるかたわら、様々な自然療法、特に心が身体に及ぼす影響について研究し「人はなぜ治るのか」(日本教文社)にまとめ、画期的な治癒論として高い評価を受けています。その実践編にあたる「ナチュラルメディスン」(春秋社)では誰でもできる健康増進法、自然療法をとても分かりやすく書いてくれています。

 これからもっと研究が進んで、病気と心との関わりが少しずつ明らかになってくるのかもしれません。これらの本は闘病中の方や体調に不安のある方に、心の底から本当に治りたいと思えば必ず治るんだ、という勇気を与えてくれる本ですので、ぜひ読んでみてください。

育くむこころとからだ  尾木文之助  自費出版  1000円

 てまえ味噌で申し訳ないのですが、前院長である尾木文之助が高知新聞に掲載された「カルテアラカルト」他を一冊の本にまとめたものです。高知県の小児医療の現場でたくさんの子供を見てきた経験から、子育ての中でごく当たり前のことながら、忘れてしまいがちなことを思い出させてくれます。この本は別のコーナーで内容を紹介しています。

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