アトピー性皮膚炎ってどんな病気

アトピー性皮膚炎は、良くなったり、悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を特徴とする皮膚疾患です。多くの患者さんは皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)アトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)をもっています。
それに加え、様々な環境要因として食物やダニ、繰り返し掻くことによる刺激、汗の刺激、乾燥、化学物質の刺激、ストレスなどの心理的な原因などが、アトピー性皮膚炎の発病や悪化に関係しています。

アトピー素因

アレルギーを起こしやすい体質が家族や自分にあればアトピー素因があるといいます。人の体には体の中に入った特定の異物を除く、免疫という仕組みがあります。これは異物(抗原:アレルゲン)に対して反応する抗体(免疫グロブリンE:IgEというタンパク質)を作って、体から除く仕組みですが、この免疫が異常に強く起こることをアレルギー反応といいます。ただし、アトピー性皮膚炎だと必ずこの体質であるというわけではなく、また、アトピー素因があってもアトピー性皮膚炎にならない人もいます。

皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)

健康な皮膚では、皮膚の表面の角質層に十分な量の保湿成分や油分(アミノ酸やセラミドなど)を持っていて皮膚のバリアができ、体内の水分が出ていったり、外からさまざまな物質が侵入するのを防いでいます。

一方、アトピー性皮膚炎の人の肌は、保湿成分やセラミドが少なく、乾燥肌(ドライスキン)の状態にあることが分かっています。バリア機能が弱くなっているので、アレルギーの原因となる異物(アレルゲン)や微生物が侵入しやすく、また汗などの刺激に弱くなります。アトピー性皮膚炎の人が薬や化粧品、金属などにかぶれやすいのも、このためです。少しの刺激でかゆみが出るので、そこを掻いてしまい、掻くことでバリア機能がさらに破壊され、刺激物がますます侵入しやすくなり、炎症を起こしてさらにかゆみがひどくなる、という悪循環に陥りやすいのです。

環境に関連する要因(アレルギー的因子)

2歳までの場合、アレルギー的因子(アレルゲン)として代表的なものは、食物とダニです。食物で代表的なものは、卵、牛乳、小麦や大豆です。3歳以降は食物の影響はほとんどなくなり、ダニや花粉の影響が大きくなると考えられます。自分がどんなものに対してアレルギーを持っているかは、検査で調べることができます。

その他、アレルギー以外のものとして繰り返し掻くことによる刺激、汗の刺激、乾燥、化学物質の刺激、ストレスなどの心理的な原因などが、アトピー性皮膚炎の発病や悪化に関係しています。

※アトピー性皮膚炎の検査

  • 血液検査…アレルゲンを見つけるための検査のひとつにIgEラスト法という血液検査があります。(ただし、この検査で陽性でもアトピー性皮膚炎の症状の出ない方もいます)。
  • 皮膚検査…スクラッチテスト(針で少しだけ皮膚をひっかく)とパッチテスト(皮膚に貼る)があります。どちらも皮膚に候補物質をつけて反応をみる検査です。
  • 皮内検査…候補物質を皮膚に注射して反応をみます。
  • 負荷試験・除去試験…原因食物を特定する時に行います。まず原因食物を食べないようにして状態を観察し、その後、少しずつ原因食物を増やして、症状の悪化があるかどうか観察します。専門の医師によって、注意深く、時間をかけて行う必要がある試験です。

アトピー性皮膚炎を発症・悪化させる原因まとめ

アトピー性皮膚炎の治療

スキンケアをしっかり行いましょう
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、乾燥しバリア機能が低下しているので、皮膚を清潔に保ち、きちんと保湿することがとても大切になります。

皮膚を清潔に保つ

皮膚を清潔に保つには、毎日のシャワーや入浴が大切です。特にスポーツで汗をかいた時などは、できるだけ早くシャワーや入浴で汚れを落としましょう。石鹸やシャンプーはできるだけ低刺激のものを使用し、よく泡立ててやさしく洗い、よくすすぎます。強くこすらないように注意しましょう。(体が温まるとかゆみを引き起こしやすいので、高い温度のお湯は避けること。)入浴後はすぐに保湿することが大切です。

バリア機能を補う

ドライスキンでは皮脂や角質層の中の天然保湿因子やセラミドが普通の方より少ないので、皮脂の代わりになる保湿薬や、角質層の水分保持の働きを補強する保湿薬等を皮膚に塗ります。

紫外線から皮膚を守る

過度に紫外線を浴びると、皮膚の炎症を悪化させることがあるので、できるだけ大量の紫外線を浴びないよう注意します。紫外線の多い時間帯の外出を避けたり、つばの大きい帽子や日傘を利用しましょう。皮膚への刺激が少ない日焼け止め化粧品も効果があります。

薬物療法のポイント

アトピー性皮膚炎の治療において中心になるのは塗り薬(主にステロイド)による治療です。ステロイド外用薬の副作用やその強弱による使い分けをよく理解していただき、適切に十分使うことが何よりも大切です。

ステロイドの塗り薬には、「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階のランクがあり、それぞれの皮膚の症状、場所、患者さんの年齢などを考えた上で、適切なランクの薬が選択されます。(例:顔面は吸収が良いので原則として「弱め(ミディアム)」クラス以下を使用)

0.5g(人差し指第一関節部までに乗る量)
この量を大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗るアトピー性皮膚炎治療の外用薬は、適量を、患部全体を覆うように塗り拡げます。大人の手のひら2枚分くらいの面積に0.5g(人差し指第一関節部までに乗る量)を塗るのが適量の目安です。すり込むように塗るのではなく、塗り薬を「乗せる」ように、皮膚全体を覆うように塗り拡げます。塗り伸ばしやすくするために、ステロイド薬と保湿剤を混合することも多いです。

他に、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を補助的に内服したりもします。

悪化要因の除去

アトピー性皮膚炎は、薬物療法とスキンケアを正しく行うことで、ほとんどの場合、症状をコントロールすることができます。しかしそれでも症状の改善がみられない時は、症状の原因となっているものや悪化させる可能性のあるものを探し出し、それを取り除くことも大切です。

乳幼児ならば、食物に加え、汗、ダニ、ほこりなどの生活環境、細菌・真菌などが主な悪化要因と考えられます。明らかに「これを食べると皮膚炎の症状が悪化した」とわかる食物については食事からできるだけ取り除くようにしますが、原因の確定には、専門の医師による注意深い検査が必要です。自己判断で安易に食物を制限したりしないようにしましょう。

また、ストレスも症状を悪化させる原因のひとつです。特に成人のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、心理的ストレスから「かゆくないのに掻く」のがくせになってしまい、そのために症状が悪化している例がみられ注意が必要です。

室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境をつくりましょう

まめに掃除をして、ほこりやダニを取り除きましょう。じゅうたんやぬいぐるみはできるだけ避け、布団は日に干します。部屋は風通しをよくして、温度と湿度を適度に保つようにしましょう。

規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避けましょう

アトピー性皮膚炎の人にとって、生活リズムを整えることはとても大切です。十分な睡眠、規則正しい生活、栄養のバランスの良い食事を心がけましょう。適度な運動も有用ですが、汗をかいたらすぐにシャワーを浴びることを忘れないようにしましょう。

刺激の少ない衣服を着ましょう

ウールやアンゴラなど、ちくちくする繊維はかゆみを誘発することがあります。特に下着の素材には注意が必要です。手首、首、わき、ウエスト、足首などは衣類の刺激を受けやすい部位です。特に手触りの柔らかいものを選んでください。

爪は短く切り、掻きこわしで皮膚を傷つけないようにしましょう

爪がのびていると、掻いた時に皮膚に傷がつき、症状をさらに悪化させるので、短く切っておきましょう。また掻いたあとの爪は、細菌やごみがたまっていますので、よく洗いましょう。

ストレス解消につとめましょう

症状について神経質にならず、気持ちをおおらかに持ちましょう。仕事などのストレスを上手に解消しましょう。